みなみ野動物病院

運動器疾患への取り組み

LOCOMOTORIUM

運動器への総合的なアプローチが可能に

当院では、専門外来で、整形外科、義肢装具外来を行っておりましたが、この度新たにリハビリテーション科を設け、運動器疾患に対して、新しい医療体制が提供できるようになりました。
これら3つの科が連携することにより、運動器疾患を抱える動物達に多角的視野から治療計画をたて、また、総合的な治療が行える体制づくりを目指します。

運動器疾患への取り組み

疾患別による当院の医療体制

小型犬に多い膝蓋骨脱臼(パテラ)疾患に対して

膝蓋骨脱臼の疾患を抱えるワンちゃんは多くいます。年齢や、グレード、症状、基礎疾患の有無などにより、外科治療、リハビリテーションがあります。また、それらの治療の補助治療とし、装具療法が選択される場合もあります。

小型犬から大型犬まで発症が多い前十字靭帯断裂に対して

治療法は、基本的には外科治療が第一選択されますが、年齢や基礎疾患によっては外科治療が施せない場合には、生活の質を向上させる為に、リハビリテーションや装具療法などが選択されます。

関節炎に対して

関節炎の原因は、関節の形成不全や、靭帯損傷や膝蓋骨脱臼などによって引き起こされる変性性関節症や、細菌などによる感染性関節炎、また、自己免疫によるリウマチ様関節炎などがあります。このように関節炎には様々な原因があり、そして症状の重症度や進行速度も様々ですが、基本的には長期的には徐々に悪化していくケースが多いです。
よって、関節炎に対しては、整形外科では疼痛緩和などを目的として、内科や外科治療、また機能障害を改善させるためにリハビリテーション、そして、補助治療として装具療法など、関節炎に対しては総合的な治療が重要になってきます。

この様に、これら3つの科が連携することにより、疾患を抱えるワンちゃんネコちゃんに最適な医療を提供し、失われた運動機能の回復を促し、少しでも快適な生活を送れるように努めていきます。

整形外科担当より
膝蓋骨脱臼

膝蓋骨は俗に「膝のお皿」と呼ばれる小さな骨です。この膝蓋骨が、本来収まるべき太ももの骨の溝(滑車溝;かっしゃこう)からズレてしまう病気が膝蓋骨脱臼です。ごくたまにしか脱臼せず、脱臼しても自然に元の位置に戻るものから、常に脱臼しており全く戻らないものまで、膝蓋骨脱臼の重症度は様々です。膝蓋骨脱臼を有する動物では、スキップする、ガニ股で歩く、足を上げたまま歩く、といった様々な症状が生じます。軽症の動物では、症状がほとんどない、あるいは飼主様が気づかない程度の症状しか出ないこともあります。 当院では、脱臼の重症度や症状の程度に応じて、手術が必要か否かを個々の動物ごとに慎重に判断します。
手術は、
・膝蓋骨を内側・外側から引っ張っている組織のバランスを整える
・滑車溝を深くする
・膝蓋骨から伸びた膝蓋靭帯が付着する、すねの骨の一部を動かす等、複数の術式を組み合わせて実施します。

前十字靭帯断裂

膝の関節は、太ももの骨とすねの骨、それらをつなぐ複数の靭帯(前/後十字靭帯・内/外側側副靭帯)で構成されます。犬では、このうち前十字靭帯の損傷がよく生じます。前十字靭帯を損傷すると、太ももの骨とすねの骨がずれてしまい、足を完全に挙げしまう、足をつくけれどもしっかり体重がかけられない、といった症状が出ます。損傷した前十字靭帯は残念ながら治癒しません。様々な治療法がありますが、当院では前十字靭帯がなくても膝がずれないように脛の骨の形を矯正する、TPLO法と呼ばれる治療を多く実施しています。文章だけではわかりにくい手術です。診療の際に詳しくご説明しますのでご安心ください。

リハビリテーション担当より
膝蓋骨脱臼

重症度により、関連する筋肉および腱の拘縮がみられます。手術前からそれらの組織への理学療法の介入により、手術がやりやすくなる事があります。術後は疼痛緩和が第一で、術式に合わせて組織治癒を促す理学療法を行います。治癒の経過とともに、患肢の使用を促す運動療法を始めます。最終的には、目標とする生活スタイルを送ることができるように導いていきます。外科治療まで必要ない症例は、徒手療法で症状をある程度改善させることができます。また、高齢など、外科治療ができない場合は、生活の質を上げる目的で、徒手療法と運動療法を組み合わせて行います。

前十字靭帯断裂

前十字靭帯断裂は、重度の痛みと体重を支えることができなくなる膝関節の外傷です。治療は、外科手術が基本となります。術式に合わせて、疼痛緩和、組織治癒促進、関節炎コントロールを術後に行います。経過をみながら体重を支える運動や関連する筋肉と筋膜のコンディションを整えて回復を助けます。高齢で重度の心疾患などがあり、外科手術が適応できない場合には、保存療法として膝の装具療法を行います。

義肢装具外来担当より
前十字靭帯損傷

装具には目的に応じて、治療補助(医療用装具)と生活補助(更生用装具)の2つあります。治療補助は、装具により膝関節と足根関節を固定させ、患部である膝関節の周囲に起こる生体反応(繊維化)によって膝関節が固められる、つまり関節の安定化を目標に使用いたします。ギブスに比べ脱着の容易な装具は長期間装着できるため、装具の方が治療に適しています。また、受傷から時間が経過しており、慢性的な痛みや、足に力が入れられない様な症状がある場合には、生活補助の装具が適応となります。こうした装具は、個々の関節や筋力の状態を考慮するため、治療補助の装具とは違った形状や機能となる装具が作製されることが多いです。

膝蓋骨脱臼

ワンちゃんとネコちゃんの膝蓋骨は、サイズが小さいため、装具によって膝蓋骨を直接矯正することが難しく、基本的には治療補助の装具(医療用装具)ではなく、生活補助の装具(更生用装具)が適応になります。この場合の装具は、膝蓋骨脱臼の程度や症状、併発する疾患によって装具の構造が変わります。しかし、症状に対する的確な装具の作製は簡単な作業ではなく、獣医師と義肢装具士が連携して、年齢、犬種、体重、生活様式、症状を考慮し作製されます。出来上がった装具は、フィッティングを重ねながら機能評価を行います。また、ワンちゃんとネコちゃんが装具に慣れ、日常的に装具を使用できるまでには数週間から1ヶ月近くかかります。この期間、ご家庭での様子を聞き、飼主様と相談しながら、その後も必要に応じて調整を重ねていきます。

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