みなみ野動物病院

画像診断科

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診察のご案内

適切な治療には適切な診断が必要不可欠であり、そして、小動物臨床において「診断をする」には、画像検査の役割が重要だと考えています。近年、画像検査機器の進歩に伴い、これまでは診断が難しかった症例が適切に診断ができるようになってきています。

当院では、一般デジタルX線検査機器(DR)、超音波検査機器、軟性内視鏡、硬性内視鏡、Cアーム(Cアーム型デジタルX線透視装置)、CT(コンピューター断層撮影)装置等の、各種先端医療検査機器を活用し、適切な診断に努めています。セカンドオピニオンとしてのご受診も承っています。お気軽にご相談ください。

受診日

当院診療日は毎日ご受診いただけます。お気軽にご連絡ください。

042-636-3133

CT装置のご紹介

CT装置とは


CTは、コンピューター断層撮影(Computed Tomography)の略語です。撮影の原理は、X線発生装置が動物の身体を360度方向から照射し、そのデーターをコンピュータが計算し、画像化します。同じX線を使う一般レントゲン検査よりも、身体をたて・よこ・ななめといった任意の断面像や、3-D画像で観察することが可能であり、病変部の部位や形状等の細かい情報を得ることができます。

また、造影剤を使用することにより、腫瘍などの病変部位がわかりやすくなったり、血管の走行等を把握することも可能です。これらにより、病気の精密検査だけでなく、手術前の精密検査にも有用です。当院では、16列マルチスライスヘリカルCT装置(HITACHI Supria)を導入しており、0.625mm間隔で細かい断層画像を作成ができ、また、短時間で被曝量の少ない正確な検査が可能です。

CT検査が有効な疾患

椎間板ヘルニア、鼻腔内疾患、歯科疾患、内〜外耳炎疾患、腫瘍性疾患、骨関節疾患、胸・腹部疾患など、様々な疾患に対して非常に有用性の高い診断装置です。

注意事項

1. CT検査は、基本的に全身麻酔です
画像検査は、撮影すればいいという訳でなく、正確な画像を描出することにより、正確な診断ができます。CT検査は、動物の不動化が正確な画像を描出するのには必須であり、それには基本的には全身麻酔が必要です。

2. 造影剤に対する副作用があります
より正確な診断を行うために造影剤を用います。造影剤の種類として副作用の少ない非イオン性のヨード剤を使用しますが、副作用として、稀に各臓器に対する過敏反応、腎不全、一過性の肺水腫、吐き気などの症状が見られることがあります。

症例1:歯周病疾患

来院されたきっかけ:麻酔下での歯石とり

本症例の解説:歯科処置前にCT検査で歯根部の状態を評価しました。左上顎第一後臼歯においては、肉眼的には歯石とりのみの処置で大丈夫そうに見えますが、CT画像では、歯槽骨の骨吸収がかなり進行していることがわかります。このような歯を残しておくと歯根部に膿が貯留することがあります。この歯に関しては抜歯が必要と判断されました。人と同様に動物でも、歯科処置の前に画像検査で歯の状態を把握することは重要だと思われます。

症例2:膝蓋骨(おさらの骨)の骨折

来院されたきっかけ:左後肢のびっこ

本症例の解説:本症例は、1ヶ月以上続く原因不明のびっこで来院されました。単純レントゲン検査にて膝蓋骨(おさらの骨)の骨折が疑われましたが、膝蓋骨はとても小さな骨であることから、疑われる病変部の詳細な情報を得るためにCT検査を実施しました。CT画像では、膝蓋骨の骨折病変が描出され、また骨折の状況も詳細に確認することが出来ました。CT検査は任意の断面で評価することが可能で、また3D画像でも評価できるため、2Dのレントゲンでは状況が把握しにくい骨折病変に対しても有用であると思われます。

症例3:甲状腺腫瘤

来院されたきっかけ:跛行

本症例の解説:前肢のびっこで来院されました。当院の整形外科専門外来にて一般的な検査を行いましたが、確定的な診断には至らないため、何かびっこを引き起こすような病変がないかを目的とし、CT検査を実施しました。また、今回、高齢犬であることから、全身的な範囲で撮影を行いました。結果、びっこにつながる異常所見は検出されませんでしたが、偶発的に甲状腺の腫瘤性病変が確認されました。CT検査を行えば、身体のことが全て分かる訳ではありませんが、画像から得られる情報量はかなりあり、病気の検出につながることがあります。

症例4:頚椎の骨腫瘍

来院されたきっかけ:首の痛みとふらつき

本症例の解説:犬種、年齢、症状などから、頚部の椎間板ヘルニアを疑いCT検査を実施しました。結果、第三頚椎の部分で骨溶解像と、脊柱管内に脊髄を圧迫する腫瘤性病変(青色矢印)が確認されました。
これらの所見から、頚椎に発生した骨腫瘍が疑われました。この病変は、単純レントゲン検査では検出できない病変ですが、骨の病変に検出感度が高いCT検査で診断する事ができました。 *黄色矢印は脊髄 *3D Volume Rendering 画像でも骨溶解が確認される。(赤色矢印)

症例5:腎臓、尿管結石

来院されたきっかけ:来院されたきっかけ:血尿(他院紹介症例)

本症例の解説:本症例の解説:血尿を呈している猫で、超音波検査から尿管結石による水腎症(腎臓から尿が排泄されないため、腎臓に尿が貯留してしまう病態)が認められたため、当院に病態の精査と、治療を目的に来院されました。

腎臓結石と尿管結石は、今、猫ちゃんにとても多く認められる疾患で、結石を作らせない抜本的な治療法はなく、大変治療に苦慮いたします。いまの超音波検査機器は以前に比べ高性能で、尿管結石の診断率は高いと思われますが、複数個結石が認められる場合や、他臓器などにより結石が隠れている場合などもあり、全てを超音波検査で把握することは困難です。本症例のようにCT検査は、腎臓結石ならびに尿管結石を、数、位置、大きさを鮮明に抽出することが可能で、その後の、外科手術を含めた治療選択の一助になると思われます。 *黄色矢印:右腎尿管結石、赤色矢印:左尿管結石

症例6:環軸亜脱臼

来院されたきっかけ:首の痛み(他院紹介症例)

本症例の解説:1.5キロのチワワで、首の痛みを主訴にご来院されました。単純レントゲン検査で、頚椎(首の骨)の一番目と二番目の緩みが確認されました(青色矢印と緑矢印が離れている)。頚椎の詳細な情報を得るためにCT検査を行いました。その結果、第二頚椎が背側に変位しており、単純レントゲンより明らかに緩みが確認され、重度に脊髄が圧迫されていることが推測されます。

環軸亜脱臼は基本的には外科的治療になりますが、脊髄を避け、小さな骨にピンを複数本刺さなければいけないハイリスクな手術になります。CT画像を元に、骨の形態を把握し、緻密な手術前計画が必要となります。 *黄色矢印:第一頚椎(環椎)、赤色矢印:第二頚椎(軸椎)、青色矢印:環軸弓、緑矢印:軸椎棘突起、水色矢印:ピン

症例7:椎間板ヘルニア 胸腰部

来院されたきっかけ:急に後ろ足が立てなくなった

本症例の解説:脳や脊髄などの画像評価は、CT検査よりもMRI検査の方が優れており、多くの神経疾患では、MRI検査が選択されます。しかし、神経疾患の中でも、椎間板ヘルニアは、単純CT検査ならびに、脊髄造影後のCT検査(CT myelography )により、大体が診断可能であります。臨床症状、神経検査、単純レントゲン検査などにより、椎間板ヘルニアが強く疑われる場合には、当院では麻酔下で単純CT 検査とCT myelography検査を行い、椎間板ヘルニアと診断されれば、そのまま手術まで実施することが可能です。つまり、一回の麻酔で診断から手術までを実施することが可能です。ただし、状況によりCT検査よりMRI検査をお勧めする場合には、大学病院や検査センターをご紹介させて頂きます。 *赤色矢印:石灰化を伴う椎間板物質、 黄色矢印:脊髄

症例8:椎間板ヘルニア 頚部

来院されたきっかけ:頚部の痛み

本症例の解説:2歳のフレンチブルドックで、重度の頚部の痛みがありました。症状としては、おもちゃを噛むとギャンと痛がる、首をすくめている、手の甲を舐めているなどです。年齢、犬種、臨床症状、触診などから頚部の椎間板ヘルニアを疑い、まずは内科治療として、痛みを軽減すさせるためのお薬を3種類使いました。 多くの症例では内科治療で痛みは軽減されますが、このワンちゃんは痛みが改善しませんでしたので、飼主様と相談し、手術を検討することになりました。

そこで麻酔下でCT検査を行ったところ、頚椎の3番目と4番目の間に、重度の椎間板ヘルニアが認められました。椎間板ヘルニアの位置が明確に分かりましたので、そのままの麻酔で、頚部椎間板ヘルニアの手術(ベントラルスロット術)を実施いたしました。手術後のCT画像では、脊髄を圧迫していた椎間板物質が除去されていることが分かります。術後の経過は、痛みが劇的に消失し、元気になりました。 *黄色矢印:石灰化を伴う椎間板物質、 赤色矢印:脊髄、  青矢印 手術部

症例9:口唇の形質細胞腫

来院されたきっかけ:腫瘍専門外来にセカンドオピニオンで来院

症例9:口唇の形質細胞腫

本症例の解説:上顎の口唇にしこりができ、手術にて切除したが再発したため、セカンドオピニオンで、当院の腫瘍専門外来を受診されました。

しこりは再発していることから悪性腫瘍が疑われ、また、発生部位が鼻の近くの口唇であるため、拡大切除が難しい部位であることから、診断を丁寧に進めていく必要がありました。CT検査の目的は、腫瘍の範囲、周囲のリンパ節の評価、肺など臓器への転移の評価です。腫瘍の大きさを確認し、切除範囲を決めます。また、周囲に多数存在するリンパ節の大きさをチェックし、リンパ節郭清の必要性を検討いたします。さらに全身のCT画像から転移が疑われる所見を精査いたします。 *※ 黄色矢印:腫瘤範囲、 赤色矢印:腫大しているリンパ節、 赤線:外科切除範囲

症例10: 肝膿瘍

来院されたきっかけ:元気食欲減退と、嘔吐、呼吸促迫で来院

症例10: 肝膿瘍

本症例の解説:本症例は急な体調不良が認められたため、各種検査行ったところ、超音波検査にて肝臓実質に多発性の嚢胞が確認されました。嚢胞と胆嚢を穿刺し貯留液検査を行ったところ、細菌と炎症細胞が確認されましたので、肝膿瘍(経胆道性に感染を疑う)と診断しました。

経皮下で肝嚢胞に穿刺をし可能な限り排膿処置を行い、抗生剤の投与を行いましたが、改善が認められなく、また、超音波検査所見で、肝膿瘍の病巣が肝外側左葉に限局されている可能性が高かった為、外科手術を考慮しました。

本症例のC T検査の目的は、肝膿瘍の病巣の部位を確認するために行われました。単純C T検査所見では、肝臓実質内に低吸収の腫瘤性病変が多発的に認められ、造影C T検査では、腫瘤辺縁不整で、その辺縁は動脈相と門脈相で増強され、壁と内部の境界は明瞭、そして腫瘤内部は隔壁構造を持ち造影はされない。これらの所見は、肝膿瘍を示唆するものです。病変部は超音波所見と同様に肝臓外側左葉に限局されていました。

よって本症例は、肝臓外側左葉全摘出と胆嚢の摘出を行いました。 *※黄色矢印:肝臓内腫瘤、 青色円内:病巣

症例11: 鼻腔内腺癌

来院されたきっかけ:眉間部が腫れているので来院

症例11: 鼻腔内腺癌

本症例の解説:鼻腔内腺癌は鼻腔内腫瘍の中では最も発生が多い腫瘍です。腫瘍が鼻腔内を占拠することで鼻血やくしゃみなどの症状を示します。ほかの臓器に転移することは稀ですが、局所で増大し鼻腔内から脳へと浸潤すれば神経症状を示すこともあります。また、骨を破壊して外へと出てくれば顔貌を著しく変化させてしまうこともあります。

この症例も眉間部が腫れているとのことで来院されました。CT検査にて、鼻腔内に骨融解を伴う腫瘤性病変を認め、組織生検を行ったところ鼻腔内腺癌と診断されました。脳への浸潤が認められないことから、根治を目的とした放射線治療を行うために二次診療施設へと紹介しました。

症例12: 鼻腔内腺癌 その2

来院されたきっかけ:鼻出血

症例12:鼻腔内腺癌 その2

本症例の解説:13歳のパグで、4ヶ月前から鼻血が認められ、抗生剤や消炎剤で改善が認められない為、当院にご来院されました。

外貌の変化や、単純レントゲン検査では異常が確認できないことから麻酔下でCT検査を実施いたしました。

CT検査では、咽頭鼻部の左側に腫瘤性病変が疑われる所見が確認されましたが、骨融解像もなく、CT画像では腫瘤性病変と鼻汁の鑑別が難しいこともあり、本症例では、追加検査として、鼻孔(鼻の穴)から鼻腔を観察するために硬性内視鏡検査、また、軟性内視鏡検査にて、口腔内から反転し鼻咽頭を観察いたしました。

硬性内視鏡検査では鼻粘膜の軽度充血が確認されましたが、鼻出血につながる異常所見は確認されませんでした。軟性内視鏡検査では、鼻咽頭にC Tで腫瘤性病変が疑われた同部位に、腫瘤性病変を肉眼的に確認することができました。

腫瘤性病変と確認されたことから、生検を実施し、鼻腔内腺癌と診断することができました。

犬猫の鼻腔内疾患の診断は、鼻の穴が小さい為肉眼的に観察ができず、また困難です。本症例のように、断面で画像を観察出来るC T検査に、硬性内視鏡検査、軟性内視鏡検査を組み合わせることにより、診断につながるケースもあります。

*黄色矢印:CT検査画像で腫瘤性病変が疑われる部位 青色矢印:軟性内視鏡検査で確認された腫瘤性病変

症例13: 内側鉤状突起分離(FCP:Fragmented Coronoid Process)

来院されたきっかけ:前肢の跛行

症例13:内側鉤状突起分離(FCP:Fragmented Coronoid Process)

本症例の解説:肘の関節は、上腕骨・尺骨・橈骨の3つから形成されております。内側鉤状突起分離の原因は特定されておりませんが、橈骨と尺骨の成長のアンバランスや、尺骨滑車切痕の低形成による不整合、また、鉤状突起部分の軟骨異常が病因として考えられています。若齢の大型犬に多く、両側性に発症することがあります。

この疾患は、早期発見と治療が重要で、治療が遅れると重度の関節炎に移行し、外科治療が不適になります。診断には、C Tや関節鏡が有用です。

本症例は、8ヶ月齢のラブラドールで、重度の跛行が認められ来院されました。

触診では、肘の伸展痛、レントゲンでは軽度の関節炎のサインがありました。その為、肘関節を中心としたC T検査を実施したところ、明確に両側性の内側鉤状突起分離が確認されました。本症例は外科手術を実施いたしました。

本症例のように、跛行の症状が顕著であれば飼主様も気がつきやすいですが、症状が顕著でない場合、知らず知らずのうちに関節炎は進行してしまいます。成長期に少しでも歩き方がおかしいと感じたら早めの受診をお勧め致します。

*黄色矢印:内側鉤状突起の分離

症例14: 急性肺炎(誤嚥性肺炎を疑う)

来院されたきっかけ:嘔吐と尿失禁

症例14:急性肺炎(誤嚥性肺炎を疑う)

本症例の解説:朝、嘔吐と尿失禁が認められ、来院された症例です。
来院された午前の診療中に各種検査を行いましたが、症状に一致した顕著な異常所見は認められませんでした。しかしながら、夕方に再度、胸部レントゲン検査を行ったところ、肺野に顕著な異常所見が認められ、急遽、CT検査を実施した症例です。
CT検査は、レントゲン検査よりも情報量が格段に多く得られます。本症例では、レントゲン検査からは、肺炎か肺血栓塞栓症が疑われましたが、CT画像所見から、またCT検査直後の肺胞洗浄液の塗抹検査からも、細菌性肺炎を強く疑う情報が得られ、その後の治療方針に迷いがなくなり、とても役立ちました。
人医領域では、肺の病変をレントゲン検査のみで診断することは少なく、CT検査を必要とするケースがほとんどです。しかしながら、獣医領域ではCT検査はまだ積極的に行われていない状況にあります。CT検査が動物医療でも身近な検査になると、動物医療も大きく変わるのではと思われます。

症例15: 下垂体腫瘍

来院されたきっかけ:軽度の食欲不振と体重減少

症例15: 下垂体腫瘍

本症例の解説:本症例は、食欲不振と嘔吐で、セカンドオピニオンで来院されました。本症例の診断には大変苦慮致しました。軽度の食欲不振から徐々に体重減少が認められましたが、嘔吐などの消化器症状もなく、一般検査としての血液検査、レントゲン検査、超音波検査などでは何も異常所見が認められませんでした。触診で頚部痛が認められたため神経痛の治療や、胃腸薬を使うものの体重減少に歯止めがかかりませんでした。そこで、飼主さんと相談し、麻酔下で全身のC T検査を実施致しました。その結果、頭部の造影検査で、下垂体に巨大な腫瘤が確認されました。
下垂体腫瘍では、症状として食欲低下、性格の変化、歩行異常、痙攣、盲目、嗜眠などが認められます。本症例は、実は性格の変化がありまして、以前より怒りっぽくなっていました(そこから脳疾患を疑えば良かったと・・・)。
治療法は放射線治療となりまして、週5回で4週間、計20回の多分割照射を行いました。食欲も戻り、性格も穏やかになり、飼主さんも笑顔になりました。

*黄色矢印:下垂体腫瘍

症例16: 皮下肥満細胞腫(悪性腫瘍)

来院されたきっかけ:1年前に他院で診断された肥満細胞種(悪性腫瘍)が増大したため

症例16:皮下肥満細胞腫(悪性腫瘍)

本症例の解説:臀部の皮下に発生した肥満細胞腫は、来院時には8×6.5×4cmの大きさで認められました。肥満細胞腫は犬に発生の多い悪性腫瘍です。治療法は、外科治療、内科治療(ステロイドの内科、抗癌剤治療、分子標的薬など)、放射線治療などがありますが、完治を目指す治療の第一選択は外科治療です。その場合、転移がない段階で、発生した腫瘍を完全に切除しなければなりません。
本症例は、外科治療を視野にC T検査を行い、転移病変有無の確認と、腫瘤と周囲組織との位置関係の評価を行いました。また、本症例の場合、腫瘤が大きいため、手術前にステロイド療法によって腫瘤を小さくしてから外科手術を実施しています。
C T検査からのサージカルプランは、外肛門括約筋と陰茎の筋肉(球海綿体筋)側は、それぞれ直近の皮下脂肪を切除し、半腱様筋・半膜様筋側は筋膜切除を行いサージカルマージンとしました。

*黄色矢印:肥満細胞腫/赤色矢印 : 陰茎部/青色矢印 : 外肛門括約筋/緑色矢印 : 半腱様筋

症例17: 門脈体循環シャント(PSS)

来院されたきっかけ:成長期の食欲不振

症例17:門脈体循環シャント(PSS)

本症例の解説:門脈体循環シャント(以下PSS)では、門脈と全身循環との間に血管の奇形(シャント血管)が存在し、肝臓に流入するはずの門脈血流が、肝臓を迂回して全身循環に流れ込みます。門脈は、消化管から吸収した栄養分や、腸で発生した有害物質を肝臓に運ぶ血管であるため、シャント血管が存在すると肝臓が成長せず、また有害物質を無毒化できない。それにより、消化器症状や、肝性脳症という神経症状を示し、亡くなることもあります。
PSSは、先天性と後天性、単一性と多発性、肝内性と肝外性があります。
犬のPSSの多くは先天性であり、主に若齢の動物に見られ、肝外シャントは小型犬に、肝内シャントは大型犬に多く認められます。
また、慢性肝疾患に続発した門脈高血圧症では、後天性多発性門脈体循環シャントが形成されます。
本症例は、血液検査で胆汁酸とアンモニアが高値、レントゲン検査で小肝症、尿検査で尿酸アンモニウム結晶が認められ、超音波検査ではシャント血管が疑われる異常血管が検出され、確定診断を目的にC T検査を実施しました。

*黄色矢印:シャント血管(脾静脈後大静脈シャント血管)

症例18:肺葉捻転

来院されたきっかけ:呼吸促迫

本症例の解説:肺葉捻転は気管支や血管を軸に肺葉が捻じれることで生じる疾患で、アフガンハウンドを中心とした胸郭の深い大型犬が好発犬種で、他にパグやヨークシャーテリア、ミニチュアプードル、ビーグルなどで症例が報告されています。捻転によって静脈が閉塞することで肺葉・肺胞が血液で充満し、漏出液が胸水として貯留することで捻転部から先の肺葉が無気肺となります。無気肺は次第に硬化し、エコー検査で肝臓のように描出されるようになります(肝変化)。症状は呼吸促迫のほか、咳、喀血、鼻出血、食欲不振、無気力などがあります。
レントゲン検査やエコー検査では無気肺化や胸水の貯留、肺胞内に高エコー性に描出される気泡、肝変化した肺葉などの所見が特徴的で、CT検査では捻転部で気管支の切り詰め像が見られます。
治療は捻転した肺葉の外科的切除により行います。この症例も手術を行い、現在は元気に過ごしております。

*赤色矢印 :気管支の切り詰め像、黄色矢印:肝変化した無気肺

超音波(エコー)検査のご紹介

当院は、超音波検査を、動物医療の重要な診断機器であると考えており、日立製の超音波診断装置、ARIETTAシリーズの最上位機種『ALOKA ARIETTA 850SE』『ALOKA ARIETTA 850』の2台を活用し、診断に努めております。



超音波検査とは


人の耳には聞こえない音(超音波)をあて体内の臓器や血液の流れる様子を映し出す検査です。超音波を対象物に当ててその反響を映像化するのが画像検査です。被曝の心配がないので繰り返し検査が可能で、人では妊娠の際に胎児の様子を確認する時に用いられたりしています。エコー検査とも呼ばれます。

超音波検査によってわかる症例

胸部では主に心臓、腹部では、肝臓、胆嚢、腎臓、脾臓、副腎、膀胱、消化管、子宮や卵巣、前立腺や精巣、腹腔内リンパ節等の観察が可能で、無麻酔で、体内の臓器の内部構造が観察できます。

症例1:右心耳腫瘤

症例1:右心耳腫瘤

症例2:肺動脈血栓症

症例2:肺動脈血栓症

症例3:膵炎

症例3:膵炎

症例4:腸重積

症例4:腸重積

症例5:副腎皮質機能亢進症
(下垂体性)

症例5:副腎皮質機能亢進症(下垂体性)

症例6:副腎腫瘍
(褐色細胞腫)

症例6:副腎腫瘍(褐色細胞腫)

症例7:初期の腎細胞癌
(悪性リンパ腫併発)

症例7:初期の腎細胞癌(悪性リンパ腫併発)

症例8:総胆管閉塞

症例8:総胆管閉塞

症例9:胆嚢粘液嚢腫
(キウイフルーツ様パターン)

症例9:胆嚢粘液嚢腫(キウイフルーツ様パターン)

症例10:水頭症

症例10:水頭症

症例11:大動脈血栓症

症例11:大動脈血栓症

症例12:門脈体循環脈シャント

症例12:門脈体循環脈シャント

症例13:尿管結石

症例13:尿管結石

症例14:網膜剥離

症例14:網膜剥離

症例15:上皮小体機能亢進症
(上皮小体腺癌)

症例15:上皮小体機能亢進症(上皮小体腺癌)

症例16:水腎症

症例16:水腎症

症例17:リンパ管拡張症

症例17:リンパ管拡張症

症例18:肝膿瘍(多発性)

症例18:肝膿瘍(多発性)

症例19:上皮小体腺腫

症例19:上皮小体腺腫

症例20:肺炎

症例20:肺炎

症例21:腎盂腎炎

症例21:腎盂腎炎

症例22:胆石(胆嚢管内)

症例22:胆石(胆管内)

症例23:腸炎(コルゲートサイン)

症例23:腸炎(コルゲートサイン)

症例24:拘束型心筋症

症例24:拘束型心筋症

症例25:腫瘍栓

症例25:腫瘍栓

症例26:好酸球性硬化性
線維増殖症(GESF)

症例26:好酸球性硬化性線維増殖症(GESF)

症例27:腎細胞癌

症例27:腎細胞癌

症例28:犬消化管リンパ腫
(結腸)

症例28:犬消化管リンパ腫(結腸)

症例29:猫消化管リンパ腫
(回腸)

症例29:猫消化管リンパ腫(回腸)

症例30:前立腺膿瘍

症例30:前立腺膿瘍

症例31:膵管結石

症例31:膵管結石

症例32:虹彩嚢胞

症例32:虹彩嚢胞

症例33:眼球内腫瘍

症例33:眼球内腫瘍

症例34:膵臓タイガーストライプ

症例34:膵臓タイガーストライプ

症例35:胆嚢破裂

症例35:胆嚢破裂

症例36:腎嚢胞

症例36:腎嚢胞

症例37:多中心型リンパ腫の
脾臓浸潤

症例37:多中心型リンパ腫の脾臓浸潤

症例38:膵臓腫瘍による総胆管閉塞

症例38:膵臓腫瘍による総胆管閉塞

症例39:心膜横隔膜ヘルニア

症例39:心膜横隔膜ヘルニア

症例40:消化管穿孔

症例40:消化管穿孔

症例41:肺葉捻転

症例41:肺葉捻転

Cアーム(外科用デジタルX線撮影装置)

Cアーム(Cアーム型デジタルX線透視装置)は、ステント治療や泌尿器疾患の手術時にも使われますが、特に整形外科手術時に、骨折時の整復や、ピン、プレート、ネジなどのインプラントの位置確認に使われ、手術を簡便かつ正確に手術を行うことができます。

また、この装置で気管などの動きなどを観察し、小型犬に多く、静止画では診断が難しい気管虚脱の診断に使用したり、さらには、尿道や尿管などの様々な造影検査時にも、造影剤の流れを動画で観察することができるため、様々な疾患の診断装置としても使われます。

Cアーム(外科用デジタルX線撮影装置)

レントゲン

X線を動物の身体に照射しX線が身体を通過する透過性の違いを画像化した検査です。骨や臓器などの透過性の低いものは白く、肺や皮膚などの透過性の高いものは黒く画像化されます。特に肺、骨の評価に有用で肺の病変、骨折、膀胱・尿管・腎結石などの検出に有用です。また、造影剤処置をすることにより泌尿器の排出経路、脊髄の評価、消化管の通過障害の評価を行うことができます。

心配される被曝についてですが、胸部X線1回で0.1mSv以下、CT検査で20mSv以下程度であり、一回の急性被曝が200mSv以上を超えると身体に影響がでる可能性があるといわれています。医療従事者は法律により年間50mSv以下、5年間で100mSv以下に抑えるように定められています。意外と知られていませんが、宇宙からの放射線で普通に生活していても年間2.0mSv程度被曝しています。検査に関する放射線の被曝に関しては安全といえます。

レントゲン

写真提供 島津製作所

内視鏡(軟性・硬性)

軟性内視鏡とはいわゆる胃カメラです。先端にカメラがついたチューブ状の機器を体内に入れることにより、お腹にメスを入れることなく、消化器の検査を行うことが可能です。軟性内視鏡では、上部消化管検査では、口腔内から、食道、胃、十二指腸を観察することができます。下部消化管検査では、大腸、盲腸を観察することが可能です。

観察の他には、病理組織検査目的の生検や、またポリープ切除(ポリペクトミー)、異物摘出、胃瘻設置などを行うことが出来ます。硬性内視鏡とは管が曲がらないものを指します。通常の耳鏡では観察できなかった耳の中の部位も硬性内視鏡を使用することにより検査することが可能になります。また、膀胱内や鼻腔内の検査や処置にも役立ちます。

内視鏡(軟性・硬性)
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