みなみ野動物病院

当院での腫瘍科症例紹介

1. お腹にしこりがある

診断 乳腺腫瘍
処置
乳腺腫瘍

手術前

乳腺腫瘍

手術後

お腹にしこりができたという主訴で来院されました。避妊手術をしていない子は、乳腺腫瘍の発生率が高くなります。
ワンちゃんの場合、良性腫瘍と悪性腫瘍は半々ですが、この子は急速増大の傾向が認められたため外科手術を行いました。
病理組織検査の結果、良性の乳腺腫瘍と診断されました。

2. 最近、元気と食欲がある時とない時の波がある

診断 脾臓の血腫を伴う結節性過形成
処置
脾臓の血腫を伴う結節性過形成 術前の腹部レントゲン検査

術前の腹部レントゲン検査

脾臓の血腫を伴う結節性過形成 摘出後の脾臓

摘出後の脾臓

時々元気がないとのことで来院されました。
レントゲン検査で腹部に腫瘤が認められ、超音波検査で脾臓から発生していることが分かりました。
脾臓の腫瘤は2/3の確率で悪性腫瘍のため、手術で脾臓を摘出しました。病理組織検査の結果、この子は幸いなことに良性腫瘍であることが分かりました。

3. 食欲が落ち、痩せてきた

診断 LGL(大顆粒リンパ球性)リンパ腫
処置
LGL(大顆粒リンパ球性)リンパ腫
LGL(大顆粒リンパ球性)リンパ腫

超音波検査を行ったところ、消化管に腫瘍性病変が認められました。内視鏡検査を行い消化管の組織を採取したところ、LGLリンパ腫と判明しました。高齢の猫の消化管に起きやすく、リンパ腫の中でも予後が悪いと言われていますが、本症例は抗がん剤治療により腫瘍の大きさが小さくなってきています。

4. 一週間前からクシャミをして、今朝から鼻血が出ている

診断 鼻腔内腺癌
処置
鼻腔内腺癌
鼻腔内腺癌 鼻腔に認められた腫瘤

鼻腔に認められた腫瘤

急に片方の鼻から鼻血が出たとのことで来院されました。
高齢の犬での鼻出血は鼻腔内腫瘍でよくみられる症状です。
そのため、硬性鏡にて鼻腔内の腫瘤の確認と生検を行い、病理検査にて鼻腔内腺癌と診断されました。
CT検査を行ったところ、頭蓋内にも腫瘍の浸潤が認められましたが、放射線療法と分子標的薬(抗がん剤)を併用することによって腫瘍も縮小し、症状も治まっています。

5. 1か月前から夜のトイレが我慢できない

診断 移行上皮癌
処置
移行上皮癌
移行上皮癌

夜中にトイレに行きたがるようになったため受診されました。
超音波検査にて膀胱粘膜の広範囲にわたる乳頭状の腫瘤が認められました。
カテーテルを用いて腫瘤を採取し、病理検査・遺伝子検査を行った結果、移行上皮癌と診断されました。
犬における膀胱腫瘤のうち90%が悪性と言われており、その悪性腫瘍のほとんどが移行上皮癌と言われています。

6. 食欲が落ちてきた

診断 精細胞腫・精上皮腫
処置
精細胞腫・精上皮腫

食欲が落ちてきたのを主訴に来院されました。触診で腹部に腫瘤が触れたため、検査を行いました。
この子は、精巣の片方がお腹の中にある停留精巣であったため、精巣の腫瘍化が疑われました。
手術を行い、精巣腫瘍を摘出し病理検査を外部依頼したところ、精細胞腫・精上皮腫と診断されました。
一般的に停留精巣は通常の陰嚢内精巣と比較して精巣腫瘍のリスクが9倍高くなると言われています。
そのため、生後1年たっても陰嚢内に下りてこない場合は、去勢手術をお勧めしています。

7. 肛門周りにできものがある

診断 肛門周囲腺上皮腫(疑い)
処置
精細胞腫・精上皮腫

肛門の周りに10か月ほど前からあったできものが大きくなってきたとのことで来院されました。細胞診を行ったところ、「肛門周囲腺上皮腫の疑い」と診断されました。この子は2年前にも肛門周囲に同様の腫瘤が形成され、切除したところ「肛門周囲腺腫」と診断されています。その2つは似て非なる腫瘍であり、肛門周囲腺腫は良性腫瘍ですが、肛門周囲腺上皮腫は低グレード悪性腫瘍に分類されます。転移の可能性は低く切除後の再発率は高いですが、増大し自壊しやすいため外科手術が推奨されます。また、確定診断にも病理組織検査が必要となるため、近日中に切除する予定です。

8. 悪性中皮腫

診断 悪性中皮腫
処置
精細胞腫・精上皮腫

胸腔、腹腔、心膜を裏打ちしている中皮細胞が腫瘍化したものです。
中皮細胞が存在する部位であればどこにでも発生しますが、胸腔内での発生が一般的です。症状は発生部位により異なりますが、胸水・心嚢水・腹水の貯留、発咳、元気・食欲の消失等様々です。この症例も元気・食欲の消失、いつもと呼吸がおかしいとのことで来院されました。X-ray、超音波検査にて胸水及び心嚢水の貯留を認めました。貯留液を病理検査に出したところ中皮腫と診断されました。中皮腫を完治させる治療法は確立されておらず、胸水抜去や腹水抜去などの対症療法がメインとなります。

9. 脾臓の血管肉腫

診断 血管肉腫
処置
血管肉腫

脾臓の血管肉腫

好発犬種:G.レトリーバー、ジャーマン・シェパード、R.レトリーバー、M・ダックス、M.シュナウザー、W.コーギー

好発部位:脾臓、右心房、皮膚・皮下、肝臓
脾臓腫瘤の約2/3が悪性でその2/3が血管肉腫であり、非常に侵襲性が強く、転移率が高く、約80%の症例で肝臓に転移する。小さな腫瘤でも脾臓の破裂を引き起こし、貧血、出血性のショックによる突然死を招く。

治療成績
脾臓摘出単独の生存期間は約1カ月と短く、脾臓摘出後に抗癌剤治療を施すことで病態にもよるが、約4カ月と延命することができる。

10. 心臓の血管肉腫

診断 血管肉腫
処置
心臓の血管肉腫:図の右上(右心耳)に大きな腫瘍を形成している

心臓の血管肉腫:図の右上(右心耳)に大きな腫瘍を形成している

心臓の周囲には心膜という膜があり、心臓と心膜の間を心膜腔という。血管肉腫が破裂し出血すると、心膜腔内へ血液がたまり心膜腔内圧が上がり、心臓がうまく膨らみきれず、循環不全を引き起こし、ショック状態に陥ってしまう。

11. 尻尾の皺を拭いたら血が付いた

診断 扁平上皮癌
処置

お散歩後に、尻尾の皺を拭いたら血が付いたとのことで12歳のフレンチブルドッグが来院されました。確認すると、尾の先端に直径1.5㎝の皮膚腫瘤が形成されており、表面が爛れていました。細胞診では「上皮性腫瘍の疑い」と診断され、パンチ生検では「扁平上皮癌」と診断されました。CT検査により転移が認められないことを確認したうえで全身麻酔下で切除し、病理組織検査に提出したところ、改めて「扁平上皮癌」と診断されました。この子の腫瘍の切除状況は良好ですが、今後再発や転移の有無について定期的にチェックしていく予定です。扁平上皮癌は皮膚の悪性腫瘍ですが、外科手術で取り切れれば予後は良好である場合が多いです。しかし、発生部位によっては外科手術が困難であり、放射線治療や化学療法を行う場合もあります。

12. 肛門の脇にしこりがある

診断 肛門嚢腺癌
処置
肛門嚢腺癌1
肛門嚢腺癌2

トリミング時にしこりを指摘されたことで来院。肛門嚢の硬結を認めました。エコー検査にて腫瘤性病変を認め、細胞診にて肛門嚢腺癌と診断されたため後日、CT検査を行いました。

犬の肛門嚢腺癌は,肛門嚢のアポクリン腺由来の悪性腫瘍です。悪性度が高く、リンパ節への転移が生じやすく、初めて来院された時にリンパ節への転移が認められることもあります。また,肺や腹腔内臓器への遠隔転移することもあります。
臨床症状としては、しぶり、排便困難、血便、高カルシウム血症などがあります。治療としては外科手術による切除が第一に考えられます。転移が認められる症例では、放射線治療や抗がん剤治療を組み合わせて治療を行うこともあります。

13. 体表のリンパ節の腫大

診断 多中心型リンパ腫
処置
多中心型リンパ腫

細胞診検査

症状はなく、定期的な検査の時にリンパ節の腫大がみられました。細胞診検査・遺伝子検査の結果、B細胞性多中心型リンパ腫と診断されました。リンパ腫の初期はほとんど症状がないことが多く、無治療では約1ヶ月で亡くなってしまいます。

全身性の血液の癌であるため、外科手術でなく抗癌剤の化学療法が治療の中心になってきます。

抗癌剤により1年近くの生存が期待できます。

14. 足の指にできものがある

診断 形質細胞腫
処置
形質細胞腫

手術前

形質細胞腫

手術直後

形質細胞腫

術後10日

皮膚に出来る形質細胞腫は、基本的には切除により良好な予後が期待できる良性の挙動をとる腫瘍です。体幹部や頭部、四肢によく発生します。しかし、稀に転移を起こすものや骨髄腫の播種性病変として認められることがあるため、本症例も、手術前に全身の精査を実施し、転移所見などがないことを確認した後、手術にて腫瘍を切除しました。今回は残念ながら腫瘍が発生した部位が、指先で皮膚の余りがないところだったため、指ごと腫瘍を切除する、「断指」となりましたが、無事に腫瘍は取り切れ、歩様にも異常が出ずに元気に過ごしております。

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